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The Adventures of Huck Finn ハックフィンの大冒険

アメリカ映画 (1993)

イライジャ・ウッド(Elijah Wood)の絶頂期の作品。主役度、演技の成熟度、可愛らしさ、どれをとってもこれ以上の作品はない。『8月のメモワール』は確かに上手いが少しティーンに近いし、『フォーエヴァー・ヤング/時を超えた告白』は可愛いが、真の主役ではない。それに比べ、この映画では、アメリカ文学で最も有名な作品の主役をでずっぱりで演じ、あらゆる表情を見せる。イライジャが不世出の子役だと100%納得させてくれる。2人の悪党に、重鎮ジェイソン・ロバーズ(Jason Robards)とロビー・コルトレーン(Robbie Coltrane)を配しているのもいい。後者はハリー・ポッター・シリーズのハグリッドだ。

映画は、マーク・トウェインの原作『ハックルベリー・フィンの冒険』のかなり上手な脚色である。『トム・ソーヤの冒険』は構成が単純なので、ほぼ原作通りに作っても問題がないが、ハックルベリー・フィンは後半少しだれるので、きちんと再構成しないと映画として成り立ちにくい。すなわち、王太子(フランス王位の継承者)とビルジウォーター公爵(映画ではビルジウォーターの王様と公爵)の場面を簡潔にし、最後のサイラス叔父の場面を全削除することで、ストーリーに一貫性を持たせることに成功している。整理すると、①ダグラス未亡人の家での暮らし、②親爺に拉致され逃亡、③逃亡奴隷ジムとの逃避行(ハックの女装シーンも)、④難破船との遭遇と筏による川下り、⑤ジムを隠す嘘、⑥蒸気船との衝突、⑦グレンジャーフォード一族、⑧2人の悪党との出会い、まではほぼ忠実に原作を追っている。悪党のシーンはイギリスの贋叔父兄弟なりすましだけにカットし、ラスト2割のトム・ソーヤなりすましもカットされている。

イライジャ・ウッドの青い大きな目は、映画の中でことさら強調され(目をみはって驚くシーンが多い)、笑っても、悩んでも、怒っても絵になる。ティーン前でぽっちゃりしていて、実にキュートだ。あらすじは、できるだけ多くイライジャの写真を入れたかったため、少し長過ぎてしまった。


あらすじ

映画は、ハックと友達の殴合いシーンから始まる。ケンカというよりは仲間同士での遊び。ハックが連続4発左目にパンチをくらってから、一気に攻勢に出て相手を組み伏せて、「ほんとは、こんな弱虫ブン殴ったって、ちっとも面白くない」と言って殴ろうとすると、砂の上に親爺の靴の裏の十文字の跡が。ハックですら怖れる悪党だ。ハックは、急いで黒人ジムの毛玉占いに行き、「おめえさんすぐ逃げた方がいい、と毛玉は思っちょる」と言われ、ますます蒼白に。衣食住の面倒を見てくれているダグラス未亡人の家に戻ると、同居していたワトソン嬢(未婚のガミガミ老人)に、目の黒アザのことで糾弾される。制服を紛失したので、「また、ズル休みしたんだね?」と問い詰められ、「違うよ、おばさん。学校は行ったよ」「でも帰りに、10人の子持ちの可哀相なおばちゃんに会っちゃったんだ」。「先週の話じゃ、8人の子持ちだったろ?」とワトソン嬢。「うん、2人増えたんだって」「で、おいらの上等の服だけど、みんなが暖かくなればって、あげちゃった」。ハックは、嘘八百の名人なのだ。
  
  

夕方、すぐ逃げればよかったのに、友達と最後に1回と遊びに行ってしまったため、部屋に戻るとそこには怖い親爺が。自分の不在中に、「シャレた格好」や「読み書き」のような「とんでもねぇバカな真似させた お節介焼き」は誰だと訊き、ハックが「後家さん」と答えると、胸ぐらをつかんで引きずり起こし、「そんなお節介 焼かれてやがると、痛ぇ目に遭わしてくれる」。親爺には、清潔な姿のハックが気に入らない、「全く、とんでもねぇ、倅(せがれ)だぜ。もう、我慢できねぇ」と言い、ハックを首にかつぎ、さらにボートに乗せて河畔の小屋まで連れて行く。そして、(『トム・ソーヤの冒険』でもらった)6000ドルをもらいに来たのに、判事が渡さなかったと罵り、泥酔した勢いで、「てめえは、俺の“ちっちゃな天使”になるんだ」とわめいて包丁で殺そうとする。ハックが銃で狙いをつけたところで、泥酔して昏倒。2人とも、そのまま寝てしまう。翌朝、ハックが動いて銃が暴発。その音で2人とも目を覚ます。親爺は昨夜のことはけろりと忘れていて、「てめえ、ここで何してやがるんだ?」と訊く始末。そして、「俺は、町へ行って来る。てめえは、中を掃除しとくんだ」と外出。もちろんドアに鍵をかけて。ハックは煙突から外に出て、銃で猪を殺し、ドアを斧で叩き壊し、家具を散乱され、如何にも自分が惨殺・死体遺棄されたようにみせかけると、ボートを盗んで逃げる。
  
  

ジャクソン島に逃げたハックは、そこで、ジムと遭遇する。ハックが、「ジム。早く帰らないと、ワトソンさんに叱られないかい?」と訊くと、「あんなぁハック、おらの事、誰にも言わねぇって約束するだか?」。「誓うよ」とハック。するとジムは、実は逃げ出てきたんだと打ち明ける。当時、奴隷の逃亡は、本人が吊るし首、幇助者は全身にタールを塗られ仮死状態にされるという重い犯罪だ。ジムは、ワトソン嬢が自分を売ったら、もう家族には会えなくなるから逃げたと打ち明ける。ハックは、「このままでも、やっぱり会えないじゃないか」と言うが、逃亡行為は受け入れた。ジムはミシシッピー川を下ってケイロまで行き、そこからオハイオ川を遡上して自由州に行くと言う。ハックは、「ケイロって、メチャ遠いんだぞ!」「奴隷が一人で川を下るだって? 8キロだって行けやしない」。「分かってるだ。でも、もし、ウメぇ事いけば、おら、何とか、金稼いで家族を買い戻すだ」とジム。パイプに火を点けながら、ハックは、「仕方ないな。じゃあ、一緒に行ってやる。ケイロまで付いてってやるよ」。ここがハックのいいところだ。
  
  

カヌーで川下りするには、いろんな物が必要だ。そこで、ハックは一人カヌーに乗って、調達に出かける。もちろん“買う”のではなく“頂き”に行くのだ。殺されたことになっているので、変装しないといけない。そこで女の子にバケることにする。「こんにちは、おばさん」。「こんちは、嬢ちゃん」。「どうしたの、その目のアザ?」。「牛に蹴られたの」と、出だしは好調だったが、いろいろなものを服の中に“頂き”ながら、あばさんと話さなくてはならない。ハックの独白が入る。「そのおばさんときたら、すっごいおしゃべりで、際限なくペチャクチャやるんで、絞め殺しちまおうと思ったくらいだった」。ところが、自分の殺人事件に話が及び、犯人が逃亡奴隷のジムだと言われ、思わず「ジム?」と男の子の声で訊いてしまう。これを聞いて怪しまれ、名前を再度訊かれて、最初と違った名前を言ってますます疑われ、「あの鼠、このビンで、やっつけて」と頼まれて、上手投げて仕留める。これで完全にバレ、「このチビ泥棒! 名前を、お言い! 言いなさい!」。服をつかまれ盗品もこぼれ落ち、ほうほうのていで逃げ出した。
  
  

嵐の夜、カヌーは難破船に遭遇。好奇心旺盛なハックは、「行ってみよう!」。「誰かいたら、どうするだ?」とジム。「いるもんか!」。ところが、船の甲板でジムが見つけたのは、ハックの親爺の死体だった。一方、ハックが船内で見つけたのは3人の海賊。一旦は捕まるが、船が浸水で沈みかけ、手を離した隙に逃げて、つないであった筏にジムと飛び移って何とか助かる。翌朝、ジムは、「もし、おめえさんの親爺さんが、もう町には戻らないって聞いたら… その、どっかで、死んじまったりして… そんでも、おらを自由にするため、ケイロに行ってくれるか? それとも、村さ帰るか?」と訊いてみる。「きっと、戻るだろうな。みんながどんな顔するか、見たいから」「お前も、一緒に戻るんだ、ジム。それが、筋ってもんだ」「心配すんな。お前のことは何とかするからさ」とハック。ジムは黙っていようと決心する。
  
  

筏での川下りは、ジムの人相付きの手配書(賞金400ドル)があちこちに貼られているので、夜に限ることにした。筏に乗りながら、ジムが言う。「ケイロに着いたら、おらは自由な人間だ」「自由になりゃ、いっしょけんめ働いて、女房と子供、買い戻すだ」「売らねぇってコカしたら、盗んでやる!」。「まさか、そんな」とハック。「おらの女房と子供だ。それを、売ったり買ったりするのは、正しい事じゃねぇ」とジム。「頭、冷やせよ、ジム。自分の言ってるコト、分かってるんか?」。「人間を売ったり、奴隷として使うなんて、正しい事じゃねぇ」。さらに、ジムは、「奴隷制は正しい事じゃねぇ。人は皆、自由だ」と高揚して付け加える。「そんな話、一度も、聞いたコトないぞ」と不快な顔をするハック。急に不安そうになるジム。ここで、ハックの独白が入る。「おいらは、不道徳なコトをやってる、と気が付いた」「こんなコトを続けてたら、神様に、ブッ飛ばされちまう」「おいらは、突然、なすべきコトを悟った。ジムを、引き渡すんだ」。そして、翌日、ケイロまで後どのくらか訊いてくると嘘を言って、対岸の保安官に向かって泳いでいく。しかし、「ジムとの約束、守ってくれる、たった一人の、白人の旦那だ」と呼びかけるジムの言葉に決心が揺らぎ、保安官が、「筏に乗っとるのは、白か黒か?」と質問した時、「“白”です」と答える。そして、筏を確かめるぞと言い出した保安官に、家族が病気なので「できれば、筏、引っ張ってもらえません?」と頼む。しかし、「坊主、わしら急いどるんだ」。この時のすがるようなハックの表情が最高。結局、保安官のボートに乗り込み、家族中のひどい病状を大げさに離すと、「天然痘だぞ!」と態度が急変。ボートから追い出される。
  
  
  
  

夜、ジムが「おめえさんが正しいって教わってる事にもよ… 誰もが、正しいって信じてる事にもよ… 間違いは あるだで」と奴隷制について話している時、急に蒸気船が現われた(夜なので、筏に気付かない)。ぶつかった勢いで川に投げ出される2人。ハックが1人で河岸に這い上がると、猟犬をつれ銃を持った一行に捕らえられる。長年にわたって抗争を続けているシェパードソンの一族と間違えられたのだ。そして、グレンジャーフォードの邸宅に連行される。ハックは、そこで、「蒸気船から、落ちたんです」と言い、可愛い顔立ちなので、女性軍から同情され、「ここにいていいんだよ。好きなだけね」とのお言葉。そして、客人身分で滞在することに
  
  

グレンジャーフォードの一族はこの地で大規模な綿花プランテーションを営む名士で、典型的な南部の白亜の大邸宅に住んでいる。ハックはジョージと名乗り、末っ子のビリーと友達になる。そして、捕まっているジムを見せられる。ハックは知らんぷりをする。その後、ビリーの案内で広大な農園を馬車で案内してもらい、シェパードソン一族との30年に及ぶ怨恨のことを聞かされる。一人だけになって、ジムから「ケイロに、上がって行きてぇよ、ハック。こっから、逃げ出すだ」と頼まれ、「自分のコトしか、考えないんだなジム。おいらのコトは、どうなんだ? 楽しんじゃダメなのかよ?」「こんなイイ思いするの、生まれて初めてだ」と断るハック。しかし、周辺で酷使されている多くの奴隷を見ながら、さっき自分がジムに投げ掛けた言葉が正しかったかどうか、考え込む。
  
  

館に戻ったハックが見たのは、背中に鞭の傷をいっぱい負って痛そうにするジムの姿だった。「お前が、こんな目に遭うなんて」「こんな、酷いコトやったの生まれて初めてだ」「ごめんよ、ジム」「ほんとに、悪かった」とジムの胸に顔をつけて泣くハック。「おめえさんは、今でも、おらの一番の友達だで」とジム。「そろそろ、出て行くコロ合いだな」とハック。そして、ハックが館に入ると、誰もいない。グレンジャーフォードの娘が、シェパードソンの息子と駆け落ちしたのだ。大殺戮が起きるだろうと黒人の執事。ハックは、様子を見に行ってビリーを見つけるが、そこに、馬に乗ったシェパードソンの連中5人が襲い掛かる。銃声が一発。うなだれるハック。川沿いに銃声のした方に歩いて行きビリーの死体を見つけると、「ビリー、君はすごくイイ奴だった」「ごめんよ。おいら、ほんとの名前、言わなかったね」「ハックって言うんだよ」「ごめんね、ビリー」と嘆く。
  
  

岸に流れ着いていた筏を修理して、再び川下りを始めた2人。ケイロまでの距離を、岸に向って叫んで訊いたハックへの返事は、「アホなガキだぜ、とっくに過ぎてらぁ! 40マイルも後ろだぞ」。このままだと、どんどん南部に行ってしまう。しかも筏では遡上できない。取り合えず岸に着いて昼間を過ごしていると、そこに2人の怪しい男が、無理やり乗り込んできた。老人は、「わしゃ、王様と呼ばれとる。ビルジウォーター(船底の汚水)の王様。こっちは、公爵だ」と自己紹介。ハックは嘘の来歴をでっちあげ、「おじさん達、ほんとは何やってるの?」と訊く。いろいろ述べた後で、老人は最後に「だが、一番得意なのは、3つの“り”だ」。「強請(ゆす)り、騙(かた)り、そして、引ったくり」と言って2人で笑う。ハックは、「おいらも、何か、いい商売覚えたいなぁ」。「そのうち、坊主にも教えてやっからな」と老人。
  
  

筏に乗った4人は、小さな集落へ。さっそく“男爵”が店に行って、いろいろなものを盗んでくる。その中に、ジムの手配書もあった。「おめぇら、ビリー伯父さんの農園に行くとか、言っとったな?」「ところが、人殺しの逃亡奴隷だと? 賞金は、俺が頂戴してやる」。老人は、密告はしないが、代わりに、自分たちの言う通りに「手足となって仕えろ」と命じる。ハックは従うしかない。そこに、呑気なカモが登場。その男は、2人のことを、昨日死んだピーター・ウィルクスという大金持ちの弟と間違えたと話す。「上の弟が牧師でな、かなりの年だっちゅう話なんだ。そんで、下の弟は聾唖者で、若ぇんだと。そいで、あんたら2人を見た時、てっきり…」。2人は、男を酒場に連れ込んで根掘り葉掘り訊き出す。そして、イギリスにいて20年以上会っていない2人の弟になりすますことに決める。ハックとジムは、筏で逃げるといけないので、召使のアドルファスとアフリカ探検で見つけたスワヒリ族の戦士として一緒に連れていくことに。老人:「あどけない子供を召使にしてれば、みんなコロっと騙されちまうだろ」。ハック:「誰が、あどけないって?」。老人:「2・3日、筋書き通りにしてりゃいいんだ。10%くれてやるからよ」。ハックはすかさず「20%」。老人が「15%」。そして、「手打ち」。
  
  
  

詐欺の犠牲者のいる町に着いた4人。船を降りた所で、老人が大きな声を出す。「どなたか教えて下さらんか。ピーター・ウィルクスさんが、どこに住んでおられるか。わしは、ウィルクスさんを、探しておるのですじゃ」。居合わせた保安官が、当主は昨夜亡くなったと話す。せっかくイギリスから来たのに、死に目に会えなかったと嘆く老人。かくして、多くの住民に付き添われ4人はウィルクス家へ。そこでメアリーら3姉妹と対面する。ハックは、「これは、召使のアドルファス」「イギリス人の召使じゃ。そうだな?」と紹介される。アクセントに気を付けろという警告だ。「そうですとも」とハック。しかし、イギリス人と会ったこともないので、適当な発音をしているだけだ。
  
  
  

招待者と一緒のテーブルで晩餐を共にする“王様”と“公爵”。公爵は聾唖者なので、しゃべるのはもっぱら老人。ハックのナレーションによれば「王様は、カモから訊き出した話に尾ひれを付けて、とうとうとまくし立てた」。召使の身分のハックとジムは、台所での食事。そこに一番年下のスーザンがやって来る。この子だけは、最初から4人を疑っている。そこでハックに口を滑らせようという魂胆なのだ。いろいろ訊いた後、最後が一番お粗末。スーザン:「バッキンガム宮殿は、どこにあるの?」。ハック:「バッキンガムさ」。「王様は、誰と結婚してるの?」。「お妃」。「何て、名前なの?」。「王妃」。「何て王妃?」。「イギリス王妃」。「あんた、何にも知らないじゃない! すっごい嘘つきなのね…」。この場面、2人の顔が面白い。
  
  
  
  

次の日、ジムが消えた。老人は、邪魔だから、筏で待っていると言うが、鋭いハックならこの時点で疑うべきだった。そもそも筏に置いておくと逃げるから、同行させたのだ。次が、遺言状の読み上げ。娘たちに金貨3000ドル、弟たちに金貨3000ドル。それが納屋に隠してあるという。見つけた金貨を家の前のテーブルに置く詐欺師2人。「金を、受け取るがよい」「全部、取るのじゃ。叔父たちからの贈り物として」として金貨の山を姉妹に向かって押す。感激する姉妹。そこに現われた医者。発音からイギリス人じゃないと分かり、「嘘つき野郎だぞ」と言うが、メアリーは、「金貨は全部受け取って、私たちに代わって、お好きなように投資なさって下さい」と答える。ヤバイと思ったハックは、逃げようと筏を置いておいた場所に行くが、2人の男が監獄に連れていったと聞き、愕然とする。早速監獄へ行き、ジムと窓越しに話す。必ず逃がしてやると言うが、ジムから難破船でハックの親爺の死体を見たが、隠していたと打ち明けられると、「見たってのに、なぜ黙ってたんだ? 嘘ついたのと同じコトだ。友達だと思ったのに」と怒る。
  
  
  

屋敷に戻ると、“王様”が3人をイギリスに連れていくと発表。家財を売り払ってお金にするためだ。その話をウンザリして聴いているハックの顔が面白い。その夜、せめて金貨を隠して姉妹に渡してやろうと、あちこち探しているうち、2人が部屋に入ってくる。慌てて隠れたクローゼットの奥。金貨の袋はそこに隠してあった。目の前で金貨の袋を見てニヤリとするハック。ハックが、棺の置いてある部屋に入った時、メアリーが入って来たので慌てて袋を死体の下に隠す。
  
  
  

ところが朝起きてみると部屋はカラッポだ。メアリーから、今朝埋葬したと知らされる。メアリーは、競売で奴隷をバラバラに売ったことにショックを受けている様子。ハックは腹をくくり、「これから、あるコト打ち明けたら、今夜10時まで戻らないって約束して」と言い出す。約束を受けて、「あいつら、ほんとの叔父さんじゃないんだよ」「イギリス人ですらない」「嘘つきの詐欺師なんだ」「でも心配しないで。金貨は大丈夫だから」と打ち明ける。一方、金貨がなくなったことに気付いた2人は、ハックを捜し出し、羽交い絞めにして「金貨をどこにやった?」とすごむ。「一度も見てないよ。ほんとさ、閣下! もし、盗んだんなら、こんなトコにいるかい?」。
  
  

その時、銃声が一発。もう一組のウィルクス兄弟が到着したのだ。本来なら、こんなに偶然に2組が揃うことなどあり得ない。映画では説明されていないが、原作ではピーター・ウィルクス本人が自分の病気の重さを悟り、1・2ヶ月前に会いたいとの手紙をイギリスに送ったとある。それならば、手紙をもらってすぐ旅立つとだいたいこのタイミングで到着してもおかしくはない。疑問の向きがあるといけないので、蛇足であはあるが解説しておく。さて、あらすじに戻り、一行が到着し、互いに言い争う状況が夜まで続く。そこで本物の方が、兄の胸の刺青のことを思い出す。困る王様。苦し紛れに青い矢と答えるが当たるはずがない。本物は意気揚々とイニシャルと言うが、埋葬係はどちらも気付かなかったと答える。そこで医者の提案で、死体を掘り出して確かめることになった。
  
  
  

ハックは、保安官が棺桶を開けるのに気を取られている隙に、ジムの牢屋の鍵を拝借してその場を抜け出して牢屋へ。「逃げるぞ、ジム!」。「吊るし首になっちまったと、思ってただ」。「おいら、そんな、ノロマじゃないぞ」。「ハック、何で?」。「何でって、何が?」。「何で、おらを助けてくれるだ?」。「そりゃあ、ジム、友達だからさ」。ハックを抱きしめるジム。すぐに船着場へ向う。
  
  

ところが、途中で、墓場帰りの一行に出会ってしまう。詐欺師の2人は、全身にタールを塗られている。「ガキと、逃亡奴隷が、居たぞ!」。一斉に銃で撃たれる2人。運悪く、ハックの背中に1発命中し、その場に倒れる。動けなくなったハックは、ジムに、「ジム、行けよ」と言う。「おめえさんと一緒じゃなきゃ、どこにも行かねぇ」とジム。「おいらは置いてくんだ、ジム。捕まったらリンチだぞ。早く行けよ」。「おらは、どうなってもいいだで、ハック」「おめえさんに、治ってもらいたいだよ」と医者に連れて行こうとするジム。しかし、あっという間に捕まり、ジムの首に縄がかけられる。そして吊るされそうになった瞬間、メアリーが戻ってきて2人とも助けてくれた。「その子を、放しなさい! 潔白なんだから!」「その子が、奴隷を助けてと言うんなら、ちゃんとした理由があるはずです。だから、2人とも放しなさい!」と言って。
  
  
  

最後の場面は、ベッドで寝ているハックから始まる。看病していたメアリーが気付き、遠くから駆けつけたダグラス夫人が呼ばれる。「ダグラスおばちゃん。どうしてここにいるの?」。「ほんと、良かった。一週間も、意識を失ってたんだからね」「事件のこと聞いて、蒸気船に飛び乗ったのよ」。「おいらのコト、恥知らずで見下げ果てた奴だって、思っただろ。ジムを、自由にしようとするなんてさ。怒ってる?」。「とんでもない。とっても、偉かったわ。皆、当たり前に思ってるけど、奴隷制度は正しかないよ」。いいおばさんだ。そこに、立派な服を着たジムが入ってくる。所有者のワトソン嬢が、死ぬ前に自由にしてくれたと、感激の面持ちで話すジム。「おら、自由なんだ、ハック。自由な人間だで」。そして、ハックも回復し、旅立ちの時がやってくる。ハックの独白が入る。「メアリー・ジェーンと、妹たちと、ウィルクス兄弟が、おいらの怪我と、騎士道的な奮闘ぶりにって500ドルくれた。でも、おいら、金なんか要らないから、ジムの家族に全部やっちまった」。実に潔い(500万円は下らない額だ)。姉妹3人にキスされて照れるハック。しかし、ダグラス夫人に服装を直されると、「ダグラスさんは、おいらを養子にして、手元に置いて“教化”するんだって。でも、そんなコトには耐えられない」と渋い顔の独白が入る。
  
  

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